Spay Vets Japan | スペイ ベッツ ジャパン | 繁殖予防に特化した早期不妊去勢手術専門の獣医師団体

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調査研究
調査について
全国の動物病院に聞いた!
犬猫の不妊去勢手術推奨時期の実態調査について
全国の動物病院に聞いた!犬猫の不妊去勢手術推奨時期の実態調査について
長年にわたり、獣医師は犬猫の不妊去勢手術は個体が十分成熟しきってから(繁殖適齢期に達してからもしくはその直前に)行うことを推奨してきました。一方で、近年海外では猫の不妊去勢手術については5ヶ月齢以下で行うことが新常識になりつつあることを発表しています。猫が性成熟期を迎えるまで手術を延期させる根拠を科学的に証明した文献はなく、猫の繁殖制限を早期(性成熟前)に実施することで、猫の過剰繁殖が引き起こす社会問題を根本的に解決する動きが加速しているのです。 そこでSVJでは、日本の動物病院が推奨する犬猫の不妊去勢手術時期の現状について、実態を調査すべく、以下の方法により調査を行いました。
調査方法
(1) 調査対象施設の抽出
犬猫の不妊去勢手術推奨時期について、全国的な動向を図るため、iタウンページに掲載のあるおよそ1万件の動物病院のうち、統計学的に必要とされる有効回答件数300件を得るため、各都道府県より均等に621施設をランダムに抽出(※)した。
(※)病院名から明らかに犬猫を対象としていないと推定される施設や往診専門病院、夜間救急病院等を除く。

(2) アンケート調査方法
SVJ有志会員による電話での聞き取り調査及び往復はがきによる文書調査。

(3) 期間
2022年8月~2023年1月末
調査結果
無効回答件数(廃業・休診、回答拒否、不通・無回答施設):269件(無回答率43.3%)
有効回答件数:352件(回答率56.7%)

回答
6ヶ月齢以上での手術を推奨する主な意見
【猫】
  • ・オス猫で、幼すぎると尿道の形成に影響するため、早期ではやらない。
  • ・体重2kg以上からでないと実施しない。
  • ・体格や気管チューブが入るかによって判断する。
  • ・幼いと麻酔に耐えられないため6ヶ月齢以上を必須とする。
  • ・早期で実施するメリットを感じない。
  • ・一度発情させてから手術を実施する。
  • ・4・5ヶ月齢での発情を見たことがない。
  • ・早期での手術を要望されることがない。
  • ・早期不妊手術に興味はある。4ヶ月齢未満での文献を知りたい。4ヶ月齢未満ではオペしたことがない。

【犬】
  • ・オス犬で、幼すぎると尿道やペニスの形成に影響するため、早期ではやらない。
  • ・大型犬は1年前後で成長板が閉鎖してから実施。
  • ・一度発情させてから手術を実施する。
  • ・幼いと麻酔に耐えられないため、6ヶ月以上を必須とする。
  • ・不妊去勢手術と同時に乳歯の抜歯を希望される事が多いので、ある程度成熟してから手術を勧めている。
  • ・早期で実施するメリットを感じない。
  • ・早期での手術を要望されることがない。
  • ・発情に伴う問題行動があれば手術を早める場合もあるが、基本は6ヶ月齢以降から。
考察
調査の結果、84.7%の動物病院が犬猫共に6ヶ月齢以降での不妊去勢手術を推奨していることが分かりました。早期(5ヶ月齢以下)で手術を実施する動物病院からは、「過剰繁殖を防止するため」「野良猫の場合のみ早期で実施することがある」「大型犬で、大きくなりそうなら早期で実施する」等の意見が寄せられました。一方で、大半は6ヶ月齢以降での手術を推奨し、その理由の多くは発育・形成不全や術中の麻酔への懸念により個体の成長が止まった時期を目安に行うとのことでした。

海外に限らず日本でも、無責任な飼い主による遺棄や多頭飼育問題につながる不適正飼育、飼い犬、飼い猫の予期せぬ妊娠や出産が、行き場のない野良猫や野犬を生み出し、地域社会に様々な影響をもたらしています。犬猫の不妊去勢手術の推奨時期については、近年様々な見解が示されているところですが、動物の飼育環境や所有者の有無、発育状況に応じて、臨床獣医師はこれからも幅広い視野で慎重に議論することが重要であると考えます。
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