Spay Vets Japan | スペイ ベッツ ジャパン | 繁殖予防に特化した早期不妊去勢手術専門の獣医師団体

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Researches and Studies
調査研究
会員獣医師の地域猫活動体験談
会員獣医師の地域猫活動体験談
ケース①
会員獣医師の地域猫活動体験談 ケース①
実際のTNR・地域猫活動事例について会員の実例を 聴取し、効果的なTNRを模索します。今回は、しんけん動物病院 松木信賢先生(長野県) のケースをご紹介致します。
地域の環境(どういう土地・場所なのか)
住宅街と温泉旅館街が混在する地域
地区面積は24万8000平米(千曲市建設課からの回答)、人口はおよそ1500人。
事業開始時の状況(環境・発生しているトラブルなど)
温泉街にある公園を中心に猫が無秩序に繁殖し、砂場や住宅の庭に糞尿被害が起きていた。
また繁殖に憂えた住民や隣町の住民が、猫に給餌を行うものの、片付け、清掃のマナーを守らない為に、猫に苦情を抱える住民とトラブルが起きていた。

道路上に撒かれた餌やり
▲道路上に撒かれた餌やり
取り組みのきっかけ
小中学校の育成会から通学路上に猫の糞で困っていると自治会長に相談がくる。
事業期間
令和2年4月1日~令和5年2月5日
事業開始前の事前調査で得られた、
猫の生息頭数と手術済み猫の確率(手術達成率)
各区長の証言を総合すると、50頭程という話であった。餌を与える住民の厚意で、不妊化を施される猫はいるものの、事業を行ってから未手術猫の捕獲が大半であった事を思うと、数%にも満たなかった事が推定される。
事業期間内に手術した猫の頭数(TNR またはTNHの内訳)と手術達成率
実際は、証言より大幅に多く。R5.2.5までで84頭の捕獲、手術を行った。現在でも、時たま隣接区からの流入で未手術猫の情報は上がるが。元々生息していた猫の手術は、100%終えたと言って良い。保護、譲渡の判断が必要な子猫、負傷猫の生息は見られなかった(怪我の治療の必要な猫は、ボランティアが一時的に保護し、養生した)。
どういう人間が関わったか?
関係者の地域における立ち位置(市民ボランティア・町会長など)と
地域猫活動における役割(捕獲・見守りなど)
  • ・上山田温泉自治会連合会会長と区長・・・情報収集、捕獲、手術補助
  • ・戸倉上山田温泉旅館組合組合員・・・手術補助
  • ・小中学校育成会父母・・・情報収集、捕獲、手術補助
  • ・住民・・・見守り、適正管理
  • ・市民ボランティア・・・情報収集、捕獲機貸し出し、捕獲アドバイス
  • ・千曲市は、猫不妊化補助金の支給と、適正飼育貼紙の印刷と掲示用ラミネート、観光局がホームページにて活動の広報を行う。管轄の長野保健所は、現地視察にて協力。

どういう人間が関わったか?
事業開始からのタイムライン
問題発覚からTNR実施に至るまで2回の勉強会が行われた。
2019年7月19日 千曲ねこの会地域猫活動について説明 @定例区長会
2020年3月21日 千曲ねこの会+松木先生勉強会 @定例区長会

地域猫活動の実績 令和2年度
  • ・第1回地域猫化手術 7月3日(金)~5日(日) ※温泉自治会 実績10匹
  • ・第2回地域猫化手術 8月28日(金)~30日(日) ※温泉自治会 実績10匹
  • ・第3回地域猫化手術 9月18日(金)~20日(日) ※ねこの会  実績9匹
  • ・第4回地域猫化手術 10月23日(金)~25日(日) ※自+育成会 実績17匹
  • ・第5回地域猫化手術 11月2日(金)~4日(日) ※自+旅館組合 実績13匹
  • ・第6回地域猫化手術 令和2年3月5日(金)~7日(日) ※温泉自治会 実績6匹

  令和3年度
  • ・第1回地域猫化手術 7月16日(金)~18日(日) ※温泉自治会 実績10匹
  • ・第2回地域猫化手術 10月15日(金)~16日(土) ※自+育成会 実績2匹
  • ・地域猫についての講習会 6月13日(千曲市民対象)

  令和4年度
  • ・第1回地域猫化手術 7月8日(金)~9日(土) ※温泉自治会 実績6匹
  • ・第2回地域猫化手術 10月7日(金)~8日(土) ※温泉自治会 捕獲0匹
  • ・捕獲漏れ対応予備日 令和5年2月4日(土) ※ねこの会 捕獲0匹
事業期間中の手術費用はどのよう捻出しましたか?
千曲市猫不妊化補助金(飼い主のいない猫オス3,500円、メス5,500円)、旅館組合や住民」からの寄付金、自治会費
事業終了後から現在(令和5年2月5日現在)事業開始前と比べて改善したこと
猫トイレの設置、定時定点の適切なエサやりなどで猫の全数把握ができ、自治会で手術前、手術後の回覧(情報共有)したことで、猫に対する苦情が減った。また未手術の猫の情報を回覧で募ることで取りこぼしの数を減らすことにつながった。地域内で子猫の目撃情報がなくなり住民間で手術効果の実感が得られた。成猫が生息している状況なのでロードキルがほとんどなくなった

どういう人間が関わったか?
▲「餌やり禁止」ではなく、皆で野良猫の管理を行うことを呼び掛ける街づくりへ
事業期間を終えての回顧録
(成功・失敗か。また何が結果に結びついたと思うのか)
猫の繁殖が日常当たり前になり、無関心でいた地域住民が、猫の問題を我が事と考える様に変化していった点は、大きな成功を収めたと思う。住民の中から少しずつ上がっていた猫の問題に取り組んでもらいたいという願いを、自治会長が汲み取り、市民ボランティアと情報を交換し。幾多の勉強会を重ねながら、区長、住民に取り組みの必要さを説き、合意を得た所が大きな転換点となった。また温泉街という特異な環境の中、様々な組織に関わらせた事が、我が事と捉えるようになった要因である。

当院の開院、市の補助金事業の整備、市民ボランティアが行政と事業としてこの問題に取り組む時期が重なった事も、住民活動を加速させた。

どういう人間が関わったか?
現在の活動と今後の展望
行政(保健所、市町村)、ボランティアと共に地域の猫問題について猫の習性と対策(TNR,地域猫活動)の勉強会を定期的に行い、啓発に努めています。また日ごろのTNR,地域猫活動を行政、ボランティアと行うことで信頼関係が構築され、多頭飼育問題などの対応に役立っています。日ごろの関係を基礎に新たに福祉関係者とも多頭飼育に関わる動物愛護、福祉について相互理解を深めています。

福祉関係者と連携会議を設けて月に1回ケース検討を行っており、その知見を今後全県の関係者と共有できるように研修会を実施する予定です。

現在、多頭飼育問題解決に向けた公的支援はありませんが、動物の不妊化手術費用のみならず、飼育者宅の廃棄物処理費用、飼育者支援(生活自立支援、就労支援など)など解決に必要な資金についてどうあるべきか関係者間でまとめて県に提言できるような動きになりつつあります。
新たに福祉関係者と連携が取れるようになったいきさつは
どのようなものでしたか?
普段から、地域猫活動を推進している地域の市町村担当者とは、動物部局(保健所・ボランティア)との関係構築が進んでおりました。市町村担当者から福祉部局への情報共有・提供・協力の申し出をお願いし、速やかに連携することができました。これには、社会問題として、多頭飼育問題がニュースなどで多く取り上げられるようになった背景から、環境省より多頭飼育対策ガイドラインが制定されたことが大きかったと思います。

それぞれの部署担当者が、連携することの重要性を正しく理解し、積極的に介入して下さいました。関われば関わるほど、どこか一つの部署のみでの対応は不可能だという認識も持てたと思います。環境省ガイドラインには、①予防②発見③発見後対応④再発防止 と大まかに分けられております。繁殖制限と同じく、崩壊させないよう①予防 こちらが重要です。

高齢者や生活困窮者、支援が必要と思われる方が当事者となるケースが多いため、その方たちに一番近い立ち位置におられる福祉関係者との連携は必要不可欠で、事案を早期に発見できるようなシステムも現在考えています。

どういう人間が関わったか?
▲獣医師が積極的に行政・ボランティアと交流し信頼を築くことが、スムーズな連携と問題解決に結びつく
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